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 1号に褒めてもらえた。「やればできる子」って言ってもらえた。会議中、ずっと作戦を練っていて正解だった!
 二週連続で会議を聞き逃したことには呆れられてしまったけど、これでいい。1号には先週もお小言をもらった。でも、「次はちゃんと聞くように」とは言われていなかった。珍しいくらいの詰めの甘さに感謝することにした。仮に言われていたとしても、開始早々で進展のなさを確信して、聞くのをやめてしまったかもしれないけど。とにかく、戦闘テストの方でいい結果が出せて、1号のアドバイスのおかげだってことも伝えられたんだから、ボクはもう満足している。この廊下もスキップしてしまいたいくらいだ。

 1号にはよく不真面目と言われてしまっている。でも、自分の使命を忘れているわけじゃない。創られた意味だって疑っていない。——そのはずだ。だけど、レッドリボン軍で出撃命令を待ちながら過ごす今、言葉にできない違和感のようなものを募らせている。そのせいで、ここの人たちに、彼らの話に、関心を持てなくなってしまったんだろうか。
 いや。最初から、そんな感じだったかもしれないな。ボクにとって特別なのはふたりだけ。——ボクを創ってくれたヘド博士、それから、ボクより先に、博士に創られていた1号。彼ら以外に対して思考を割けるほど大人じゃなかった。元々そうだったところに違和感が加わって、ますますその傾向が強くなってしまった。ちょっとは1号みたいな冷静さを身に着けた方がいいかと思って、そんな態度で人をちゃんと観察してみたけれど、違和感は拭えず。
 そんな中でも、1号だけは信じられた。1号はボクと唯一対等な存在で、同じ目線で話ができた。窘められることも多いけれど、軍の上層を占めている人たちとは違って、1号はちゃんと筋の通ったことを言う。性格も考え方もけっこう違うから、ボクが反論してしまうことも少なくないけど、1号だって、ボクたちの使命とか、ヘド博士のこととか、——ボクのことを、慮って言っているんだって分かる。だから、ますます好きになった。
 軽い挨拶程度で終わらせている兵士たちとのやり取りと、本気の信頼と愛慕を向けるひととの会話が同列なわけがない。1号がいなかったら、ボクは誰とも満足に話をすることもなかっただろう。これからも、1号相手にはたくさん話をしたいし、1号の話も聴きたい。ボクの話を聴いてくれるのは1号だけで、1号の話を聴けるのもボクだけだ。

『……わたしを頼るのはいい。だが、くれぐれも過信や妄信はするな。わたしの言葉を、最重要のものとして扱うことはしないように』

 メモリーに刻んだその言葉に、もう一度笑みを浮かべる。
 ——ああ、ちゃんと分かってるよ。これについても、言う通りにできる。妄信なんてしてしまえば、万が一の事態が起こったときに共倒れしてしまう。1号が正しさを見失うことがあったときに、代わりに正しい判断ができなくなってしまう。そんなんじゃ、1号のヒーローにはなれないだろ。