「それにしても……。少し意外だ」
「そうか? ボクはおまえのこと大好きなんだ。おまえと引き裂かれることを考えて落ち込まないって方が、無理がある」
「そこまで嫌がっているということも、そうだが……。おまえなら、自力で天の川を越えてきそうだ」
大胆不敵で型破り。夢物語さえ可能にしてしまうような、根拠なくとも確かな強さを秘めた自信家。そんな2号への印象のままに、空想上のたとえ話をした。
「……! 確かに!」
2号はがばりと身を起こす。抱擁は解かれてしまったが、その顔は晴れ晴れと輝いている。もう、いつもの2号の表情だ。
「そうだよな! ボクなら絶対そうする! 1号、ボクのことよく分かってるな!」
「そう……か……?」
慰めの言葉としては、もっと気の利いたものがあるだろう。このくらいで、ここまで回復されるとは思っていなかった。
空元気——というわけでもなさそうだ。本当にいつも通りだから。
「なーんだ、こんな単純なことだったんだな! 誰に言われようとも、何をされようとも、そんなの気にせず、ボクが1号のところに行けばいいんだ!」
「……頑張ってくれ」
両手を握られ上下に振られる。急激な気分の変化を目の当たりにして、呆気に取られたまま応援の言葉を返していた。
もしかすると、これは開き直りを起こしているのではないだろうか。明日からはまた不真面目なガンマ2号に戻ってしまうのでは。——それでも、気を落としたままでいるよりはずっとマシだな。今は、彼の復調を喜ぼう。
岸辺でじっとしているのはオレの役目。2号には自分で川を渡って、オレの手さえも掴んでどこへでも連れて行ってしまえるだけの強さがある。そんな2号だから、オレはガンマとして得るはずのなかった幸せを得た。オレたちが引き離される未来など思い浮かばないが、それが起こったとしても、また2号は来てくれると信じていよう。2号のことならば、いくらでも待てる。